座談会は面白い(2)

野坂昭如さんの、カンヅメ脱出の逸話(野坂さんのカンヅメ破りはたびたびあったらしく、昨日放送のNHK BS2「週刊ブックレビュー」で、岡崎武志さんが『神楽坂ホン書き旅館』のレビューの中でも紹介されていた)がすごい。記念すべき「小説新潮」創刊500号記念号の原稿を落としてしまって、「読者へ」という野坂さんの文章を載せたというエピソードは、逃げる野坂さんとそれを追いかけた担当編集者の執念との対比が、当事者には申し訳ないけれど、おかしくて思わず笑ってしまった。
ちなみに、この件を読んで、やはり野坂さんの『文壇』(文藝春秋)を読もうと、決めた。

他にも、梶山季之さんをめぐるエピソード、各社の編集者同士の虚々実々の駆け引き、などなど、現場にいた人にしか語れない、貴重な証言もたくさん出てくる。
対談の最後に、坪内さんが出席者に向かって
<b>いやぁ、今日は文学史的にも文壇史的にも、とても貴重なお話をありがとうございました。それからいくつものゴシップ。そういう現場性のあるお話にライブで立ち会うことができて、僕も個人的にとてもハッピーでした。</b>
と、挨拶をされているが、ライブではないまでも、こんな面白いエピソードをたくさん読むことができて、本当にありがとうございました、という気持ちになった。