案外、気軽に着られそうなきもの(2)

きものには古くからの決まりや仕来りがあって面倒くさいし、値段も高いし、着るのも大変そうだからと、敬遠する人が多い。
かくいうわたしも、ついこの間までは値段が高い着るのが難しいと、思い込んでいた。
しかし、値段が高いというのは、職人の手わざで染めたり織ったりした生地を、ひと針ひと針手で縫うきものには、多くの人手がかかっていることを鑑みれば当然、という遠藤さんの言葉に納得できるし、昔きものなら、ちょっとした普段着の洋服と同じか、それよりもっと手頃な価格で手に入れることができるということを教わった。
着るのが難しいも、「着崩れはご法度」という思い込みを捨てれば、そうでもないらしいということがわかった。もちろん、グズグズにだらしなく着るなどというのは論外だが、朝から晩までビシっとしていなければなどということはないと、遠藤さんはおっしゃる。
「とにかく、着て着て着たおす」うちに、自分の体にあった着付けや帯結び、立ち居振る舞いがわかってくるのだそうだ。
また、洋服と違って、きものの場合、柄と柄を合わせるコーディネイトが当たり前なので、初心者は戸惑うもの。迷ったら「歌舞伎や能の衣装をお手本にすればいい」とか、普段から「きものの細かいところまで描写している小説(例として『金色夜叉』が挙がっていた)を読むといいなど、歌舞伎や本を読むのが好きなわたしには、ありがたいアドバイスも出てくる。

ちなみに、ちょっと工夫すれば、上から下まで1万円でそろえることも不可能ではないらしい。わたしも、先日、乃木坂の蚤の市で1000円の夏物のきものと2000円の夏物の帯を買ってしまったし、履物はとりあえず近所の買い物に行くときや浴衣に合わせられればいいやと、オリエンタルバザールで1500円くらいの下駄を買った。
とにかく着慣れることが大事と、遠藤さんはおっしゃる。今のところ、毎日きものを着るというのは難しいが、せいぜい休みの日にはきものを着て、親しみたいと思う、今日この頃なのだ。