九識の会にて、不思議な噺家さんに出会う(2)

続いて、喜多八さんの「蜘蛛駕篭」。出囃子に乗って登場した喜多八さんの、倦怠感あふれる姿に、まずびっくり。そして高座に座ると、きものの着方もなんだか締まりがない感じで「アッチャー」と思っていたら、小さな声でボソボソとマクラをふっていく。「あー、わたしダメかも、この噺家さん」とちょっと引いてしまった。
ところが、噺が始まるとまるで人が変わったかのように、声に張りがあって、駕篭屋の客引きのセリフもそれっぽく、どんどん引き込まれて行く感じ。
噺自体は、初めて行った談春さんの独演会で聞いたもの。談春さんのも面白かったが、喜多八さんのも、なんだかうまく言葉にならないけれど、面白い。
マクラを聞くと、喜多八さんご自身が、相当お酒がお好きなようで、酔っ払いの男が、駕篭屋を相手に同じことをクドクドと繰り返すところの、酔い加減が半端じゃなくおかしい。
「それにしても、この人、なんなんでしょう?」なんだけれど、また違う噺を聞いてみたいな、と思わされてしまう、不思議な雰囲気を持った噺家さんだ。