九識の会にて不思議な噺家さんに出会う(1)

五街道雲助さんがお目当てで「九識の会」という落語会へ。会場は、初めて行くお江戸日本橋亭。先月行った、お江戸両国亭と同じ経営の、小さな寄席。写真では見たことがあったのだが、こぢんまりとしたアットホームな空間で、客席の前半分は座椅子の席というのが、面白い。

顔付けは、
開口一番 柳家り助(たぶん「桃太郎」)
五街道雲助「万金丹」
柳家喜多八「蜘蛛駕篭」
仲入り
柳家小菊「俗曲」
古今亭志ん橋「品川心中」

おや、雲助さんがトップバッターなんだ、とは会場でもらったチラシを見て気付く。
雲助さんの「万金丹」は、初めて聞く噺。出だしがちょっと「三人旅」に似ている。にわか坊主の二人が、「南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏」とお経を唱えながら、しばらくお酒を飲んでいないとか、白粉の匂いを嗅いでいないとか、といった愚痴を言うところが、滅茶苦茶おかしい。だいたい、扇子で高座の床を打っているだけなのに、それが木魚の音に聞こえてしまうというのが、スゴイ! そんなお経のあげくに、「あの和尚はお金を持ってそうだから、殺してお金を盗ってズラカっちゃおう!」という相談をお勤めの最中にやって、和尚さんがそれを聞いているっていうのも、バカバカしくおかしい。
で、和尚さんは本山へ所用で出かけてしまい、にわか坊主二人はお賽銭を盗んで、お酒を買って来て飲んでいると、村一番の金持ちが死んだ知らせ。本当は喪式をすることになったら、山一つ向こうの寺に頼めと和尚さんから言い付かっていたのに、お金欲しさに梅吉を増上寺のお上人と偽って、二人で出かけて行ってしまう。
お経は適当に胡麻化して、やれやれと思っていたら、戒名がいただきたいと頼まれ、あわてる二人。たまたま和尚さんの部屋を掃除していた時に落ちていた紙切れがあったのを持っていたので、これ幸いと「これが戒名じゃ」と渡すと、なんと薬の包み紙。
もらった方も「これは、薬の包み紙じゃないか」と気付いているのに、戒名だと二人に言い張られて、その文言の一々につけられた適当な理屈に、突っ込みをいれつつも、結構おとなしく聞いているのが、これまたバカバカしい。
入り乱れる登場人物を、キッチリ演じ分けていく手際がサスガ。後から思うと、いろいろ「そんなバカな!」と言いたくなるような噺なのだけれど、聞いている最中は??と思いつつ、ついつい引き込まれてしまうのが、演者の力なのだろう。