濃密な1対1の関係が結ばれる、世にも稀な空間(2)

続いて、先月から持ち越しの「化物使い」。
「化物使い」自体は面白いいい噺なのだけれど、という前置きがあって、こういう噺は、世の中の状況と、かけ離れ過ぎてしまったので、だんだん滅びて行ってしまう噺なのかもしれない、とおっしゃっていた。

まず、権助の人柄が、単なる田舎者ではなくて、実直で働き者としてキチンと描かれていく。で、ご隠居は”人使いが荒い”というより”人使いが下手”ということを、印象づけると同時に、権助の働きをちゃんと評価していることも言っておく。だから、ご隠居が単なる”イヤなじじい”にならない。
また、この権助がいい奴なんだな・・・。「お暇をもらったからには、あなたとわたしは対当だから、言わせてもらいますけど」と言って、今まで奉公に来た奴が、3日と持たなかった理由をちゃんと教えてやって、自分が辞めるのは「お化けが出て怖いから」と、ご隠居に伝えてなおかつ「夕暮れまでは、ちゃんと働きますから」と言って、用事をちゃんとこなしていく。
ご隠居も「そうか、今までよく働いてくれたな」と言って、残りのお給金にイロを付けてわたしてやるあたりは「単なる”クソジジイ”ではないぞ、やっぱり」と思うのだが・・・。
そして、権助が「化物が出るから、お暇をいただきます」と去った後、いよいよ化物が登場。ご隠居は、その日にやって来た化物に合わせた仕事を割り振って行く。これは、権助の助言?が功を奏したということなのか、と思ったのだが、考え過ぎだろうか。

権助みたいな働き者はそうそういないかもしれないが、ご隠居みたいな人は、どこの職場にも一人ぐらいはいる”上司”という感じだ。そういう意味では、まだまだこの噺、談春さんの手にかかれば、生きながらえることができるだろう。