扇辰日和@なかの芸能小ホール

扇辰日和とは思えない(失礼)いいお天気。
本日の前座さんは時助さんで、開口一番で「一目上がり」を好演。
続いて、扇辰さんが「こんなに早く、前座さんが下りると思ってなかったので、楽屋で紋之助兄さんと芸論を戦わせてました」というところから、長いマクラ。新潟の地震被災地に慰問に行って来た感想などいろいろと。ネタは「三方一両損」。江戸っ子同士の意地の張り合いの感じがよく出ていて、アドリブのギャグもあり、楽しく聞けた。
仲入りをはさんで、紋之助さんの曲独楽。ちょっとこのところご無沙汰だったのだけれど、太ったんじゃないですか? 袴のお腹の辺りが・・・。相変わらずの元気よく楽しい高座に、笑わせていただく。最後に「もう一つやらせていただいてもいいですか?」と言ったので、小さな声で「トトロ!」と言ったら、本当に「トトロ」だったので、わたし一人で「ワーイ!」と盛り上がってしまった。
やっぱり、紋ちゃんの高座は明るくて楽しくていいなぁ。
最後は扇辰さんの「井戸の茶碗」。仲入り前のマクラで「今日は、敢えて似たようなシチュエーションの噺を最後にもやらせていただきます。普通、寄席や落語会では、そういうことはしないんですけど、今日は敢えて」とおっしゃっていたけれど、ああ、これだったのねと。
今まで聞いた「井戸の茶碗」では、やっぱり権太楼さまのが一番好き。というか、ほとんど権太楼さまのしか記憶にない。
扇辰さんのは、大筋は同じなのだけれど、登場人物の描き方などに扇辰さんの工夫があって、これも楽しい。正直なばっかりに厄介なことに巻き込まれた屑屋の清兵衛さん、貧乏だけれど誇りを決して忘れない朴斎さん、誠実な木村さん、扇辰さんのお人柄がいいからなんでしょう、本当にみんなとってもいい人。
汗だくになりながら、二人の侍の間を右往左往する清兵衛さんの姿が、目の前にポっと浮かんで来るような、そんな「井戸の茶碗」だった。