立川談春独演会@ブディストホール

いやぁ、地下鉄出口から地上に出た瞬間に、「アッチャー!」と思いましたよ。なんと、ブディストホールの前の普段は広い駐車場となっている場所に、盆踊りの櫓が出来ていて、もうお祭りは最高潮!って感じ。はっきり言って、あのホールじゃ、外の音は結構聞こえるに違いなく・・・。そして、階段を上がってホールの入り口に出ると、白薩摩?という着流し姿の談春師匠が、またまたサインにいそしんでいらっしゃいました。先月は、CDも雑誌も販売なしだったけれど、今月はなんかテーブルの上に本も積んであるし・・・。と、前座さんの「サイン入り『文学界』もございます!」という声が。一瞬、我が耳を疑いましたよ(笑)。でも、まずは買わずばなるまい!ということで、表紙にサインが入った「文学界」9月号をゲットいたしましたよ。もしかして、「東京人」の販売はあるかなぁ?と思っていたけれど、よもや「文学界」とはねぇ。一応「落語ブーム」らしきものは、やはりあるようですな。
いつもよりは、だいぶ早く着いたものの、もはや座席の9割方は埋まっている。それでも、ほぼ定位置の席を確保できたのは、何より、何より。常連の追っかけ隊の皆様もだいたいお顔が揃っていた。とはいえ、今までとは明らかに客席の雰囲気が違うけど。
このところ、談春師匠の高座につきもの(有り難くないけど)となっている携帯電話の着信音を防ぐため、前座さんが開演前に、「楽屋の雰囲気ということもありますので、ぜひ、電源を切って下さい」と訴えていた(笑)。しかーし、今日は表が盆踊りだからねぇ・・・。

  • 「ろくろっ首」
  • 「死神」

仲入り

  • 「妾馬」

と、ネタ出し。最近、プログラムにネタ出ししているのは、何か理由があるのかなぁ? いや、いいんですが、談春師匠の独演会(少なくともブディスト)の楽しみの中には、「さて、これから何を聞けるのか?」とマクラを聞きながら推理するというのもあるので、ねぇ(って、何がねぇだよ!)。前半2席は、わたしにとってはお初のネタ。「ろくろっ首」は、随分前に、花緑さんで聞いて以来かもしれないなぁ。マクラで「噺家になって、わかったんですけど、小さん師匠のはすごい」とおっしゃってました。わたしの場合、落語を聞き始めた頃は、小さん師匠の面白さっていうのが、よくわからなかったのだけれど、最近、少しずつ「面白い」と思うようになってきた。というか、ネタ自体が、前は人情噺とか大ネタが好きだったのだけれど、最近は、20分とか25分くらいで上がるネタで、馬鹿馬鹿しいネタっていうのが、実は落語の醍醐味なんじゃないか?と思い始めている。もちろん、最初の頃に好きになったネタは今でも好きだけれど、そういうネタばかりが面白いんじゃない、ということに気付き始めたような・・・。もちろん、誰が演じるかというのは、非常に重要な問題なのだけれど。
ご本人も「わたしの『ろくろっ首』なんて、珍しいでしょ」とおっしゃるくらいだから、今まであまり演じられたことはなかったのでしょうね。終わってみたら、すごーく面白かった。ただ、途中の、おじさんが与太郎に「お前に縁談なんかないと思ったけど、あったよ」というあたりから、その縁談の説明を聞いてチャチャを入れている途中までの部分で、なんか与太郎与太郎っぽくなくなっていた気がした。その前後の与太郎は、もうめちゃくちゃおかしい与太郎だっただけに・・・。
一席終わったところで、「この間、昇太兄さんの会で、きものに着替えてるところを見せたら『カッコイイ!』とか言われてるんだよ」と言いながら、前座さんを呼び込み、帯を解く・・・。生着替えタイムが拝見できるとは! 昇太師匠の専売特許だと思っていたんだけどなぁ(笑)。
そして着替えタイムが終わったところで、高座に座り直して「死神」の始まり、始まり。死神を追っ払う呪文が、期間限定バージョンで、「自分でもわかんなくなっちゃう」と。多分、この呪文については、どなたかが書かれるでしょうが、わたしは自粛させていただきます(笑)。あと、面白かったのが、死神が消える時の消え方の説明。「あー、そういう風に消えるんだ」というのが、今までに数度聞いた他の噺家さんの「死神」では印象に残っていなかったので、新鮮だった。そしてついにやってはいけないことに手を染めようとする時に、「ここから、圓楽師匠だとスゴいところなんですけどね」のこと。ここをバチっとやるのを拝見するのは、先のお楽しみということで。
仲入りをはさんで「妾馬」。プログラムを見た時に「へぇ、妾馬だ」と思いながら、実は頭の中には、違うネタが浮かんでいたのは、志の輔師匠の「八五郎出世」の印象が強いせいかなぁ。志の輔師匠のは、八五郎が大工さんで、お母さんの怪我の治療費として長屋の人たちにもらったお金をおとしてしまって、仕方なく道具箱を質に入れているという設定なのだけれど、談春師匠の八五郎は、遊び人。それも多分、プー太郎ですな。前にも一度聞いていて、その時は八五郎の職業とかはスっ飛ばして聞いていた。で、前回も今回も、殿様のお土産に「椎茸昆布」にこだわる八五郎っていうのが、なんかそれだけでも八五郎の人柄が見えて来るなぁ、と。で、お鶴と無事再会を果たして、「人生やり損なったから言える事もある」とお鶴に意見をするところで、八五郎という男が、単なるノー天気な遊び人じゃないということかな? だから「お願いがございます」と急に改まって、深々とお辞儀をして、母親に初孫の顔を見せてやりたいので、お許しを、と頼むところで、不覚にもホロっとしてしまいましたよ・・・。別に、そこをクサくやったわけでもなく、流れの中でお願いするシーンもあるのだけれど、つい。そうか、お鶴に意見をするところが、ここで効いてくるのか・・・と思ったのだけれど、どうなんでしょう。
携帯電話はならなかったけど、前方のドアが何度もガチャガチャ、バタバタと音を立てていたのはなぜ? 少なくとも下手側は、ホールのロビーなんだから、誰か見張っている人がいても良かったんでは・・・。
来月は、にぎわい座と博品館。どちらも楽しみ!