立川談志・春野百合子二人会@横浜にぎわい座

小沢昭一さんがゲスト出演されるというのが、実は、チケット購入の最大の動機だったりする(笑)。それと、こんな機会でもないと、なかなか浪曲を聴けないし。ということで、台風がどうなるのか心配しつつ、横浜に行って来た。おかげで、行き帰りとも、雨には降られず、ラッキーだった。

仲入り

6月の末広亭に結局行けなかったので、小沢昭一さんのお話を初めて生で聞くことができた! 紙製の手提げ袋を片手に、登場。時々、赤坂でお見かけする時とは違って(当然だけど)、白っぽいパリっとしたスーツ姿で、にこやかな小沢さん。浪曲が大好きで「お風呂に入ると、ついうなってしまいます」と、次郎長伝の一説を披露。いい声だし、間がいいな(浪曲はあまり知らないけれど、音楽として)と、それだけで感動。はるばる来た甲斐があったというもの。それから、浪曲のルーツといわれる芸能について話始めると、紙袋の中からホラ貝やら錫杖やらが出て来る。文献で読んでは知っていた「デロレン祭文」とか「あほだら経」とか、「ああ、こういうモノなんだ」というのを目の前で実演が聞ける。錫杖の輪っかのお話なんて、小沢さんじゃなきゃできませんよの、へぇ〜×100(古い!)。小沢さんのお話が聞けただけでも、大満足なのだった。
緞帳を下ろして、舞台の準備が始まると、例によってトイレに行く人がチラホラ。やっぱり、歌舞伎のお客様と違って、下座がつないでいる意味がわからないんでしょうね、きっと・・・。
そして、緞帳が上がると、舞台真ん中に文楽の頭を染め抜いた布がかかった演台?、曲師の若い女性が上手に座っている。三味線を弾いているのだけれど、音響の調整がうまくいっていないのか、あまりよく聞こえない。そして、下手から春野師が登場。去年、40年連れ添った曲師の方を亡くされて、一時は浪曲をやめようと思ったのだとか。そんな挨拶があって「女殺油地獄」が始まる。三味線の手が、義太夫っぽいのは、演題のせいなのだろうか? それにしても、三味線の音があまり響いていないのは、なんででしょう? なかなか魅力もありつつ、でもこんなもんじゃないでしょ?という気がするので、どこかでまた浪曲、そして春野師にチャレンジしてみたいと思った。
ふたたび、緞帳が下りて、お囃子でつないでいるし、客席係の人が「このあと芸談があります。休憩じゃありません」と何度も叫んでいたが、半分くらいの人が席から立ち上がって、そのうちのまた半分くらいの人はトイレに行ったと見た。準備が整い、緞帳が上がると、談志師匠が上手の格子のところから、客席を覗いている! 中尾彬さんにもらったというTシャツとジーンズ姿で、舞台中央に。続いて、春野師、小沢さんも登場。3人がなんとなく譲り合っている感じが・・・(特に、小沢さんと春野師は)。進行役がいないので、どことなくぎこちない雰囲気が漂いつつも、それもまた楽し。談志師匠が、小沢さんは、いつもその場、その場で”小沢昭一”を演じているという気がして、素が見えない。本当にいつも演技をしているのだとしたら、すごい役者だ、という意味のことをおっしゃっていたのが、印象的だった。また「芸をやる人間は常に”怖い”という感覚を持っていないとダメ」っていうのも、そうだよなぁ・・・と、肝に銘じる(いや、芸をやる人間と言うこと自体がおこがましいのはわかっているけれど、だからこそ、ますます”怖い”という感覚は大切にしたいと思ったもので・・・)。
ここで、今度こそ仲入り。
木賊刈」に乗って、袴姿の談志師匠が登場。選挙の話を始めると、途中で不安そうにしているお客が目についたらしく「大丈夫、ちゃんと落語やるから」と(笑)。それからジョークをいくつかやって、「下谷万年町に西念という・・・」と始まったので「ウワ! 黄金餅だ!!」と。前にも生で聞いたことはあるのだけれど、やっぱり談志師匠の「黄金餅」には、ワクワクする。途中、いろいろありつつ、西念があんころもちを買って来てくれと、金兵衛に頼むあたりから、道中づけまでは入れごともほとんどなし。道中づけが終わったところで、志ん生師匠と金五楼師匠の物真似。木蓮寺の和尚さんのところは、前に聞いた時よりパワーアップしていた(笑)。談志師匠も「これ、大好きなんだ」とおっしゃっていたけど、何度聞いてもあの「金魚〜金魚〜」で始まるインチキお経がいい! そして、翌朝早く、焼き場に行って、西念が飲み込んだ金を拾うところを、しつこく、かつリアルにやって見せる。時折、お骨のかけらを客席に投げ込む仕草をしたり、ほんと、芸が細かい! 落げは、志ん生バージョンとはちょっと違っていたけれど、あれはアドリブ?
談志師匠追っかけ隊の皆様もチラホラとお見かけしたけれど、なんか、客層が不思議な構成で、そのあたりもあって、談志師匠が骨あげのところをしつこくやったのかなぁ・・・? 今日の道中づけ・お経・骨あげは、きっとずーっと忘れないと思う。