立川談春 新春独演会@横浜にぎわい座

今年初の、談春師の独演会。はてさてどんなネタをかけるのか?と思いつつ、現地でもらった本日のチラシを再度チェック。やっぱりネタ出ししてないよね、と確認(汗)。

  • 「妾馬」

仲入り

  • 「鼠穴」

「鞍馬」で登場した談春師は、オオ、お正月だしね、の黒紋付羽織袴という第一正装。マクラで「えー、それってズルいですよ!」の親孝行話をフっておいて、おめでたく「妾馬」に。「馬子にも衣装っていうけど、なぁ、ばあさん」というセリフを聞いた瞬間に「ア、だから紋付羽織袴か」と納得いたしましたよ。
しかし。それじゃなくても、あの手の話題は身につまされるのに、そこへもってきて八五郎兄ちゃん、カッコイイぞ!!ということで、殿様に「俺は、何もいりません。だから、一目でいいですから、おフクロに赤ん坊の顔を見せてやってください」とお願いするところで、不覚にも・・・。すごく自然に演じていらしたのに、ねぇ。途中から、八五郎三太夫のことを「三ちゃん」と呼び始めて、その台詞を聴くたびに、三太楼師匠の顔が浮かんで来たて困った(笑)。このまま最後は、もう一度酔っぱらいと化して、都々逸をあれこれ。お約束の「よーよー、って言わなきゃ!」もあり、笑いのうちに落げに。あー、もう満足でございますよ、はい。
仲入り後は、「中の舞」で登場するや「他に取り柄がないから、落語に狂います」といい放ち、「鼠穴」、竹次郎が訪ねてきて、兄からもらった元手が三文だったというところまで来て「しかし、3文で彼は一体どうやって暮らしたんでしょうか? それは私にもわかりません、云々」があって、「こういうこと言うから嫌いだ、という方がいらっしゃるようですが、私はそういう人とは付き合いませんから」とは! よくぞ、おっしゃいました! パチパチパチ! 「鼠穴」は、ずいぶん久しぶりだけれど、多分2度目。10年後にお兄さんの店を訪ねて行って、借りた三文を返して「これは、利息とかなんとか、そんなものではないんだけど、受け取ってください」と五両差し出すと、兄さんが「本当はな・・・」と言って、なぜ三文しか貸さなかったか、という訳を語る。ここで、竹次郎が兄さんのお店に行った時に番頭さんが「これはこれは、竹次郎さん」と声をかけるのが、効いてくるんだなぁ・・・ということに気がついた。10年前にたった一度、チラと会っただけの自分のことを覚えていた番頭さんに驚くわけだけれど、それはいかに兄さんが竹次郎の身の上を案じていたかを示す、物差しとなっていたのだった。で、二人は和解して、酒を酌み交わして、夜更けに枕を並べて床に就くわけだが・・・。ここからが上手いんだよなぁ。知っているネタなのにもかかわらず、すっかりその後の展開が夢であったということを、意識の中から飛ばして聞き入ってしまった・・・。竹次郎が首を括ろうとしたその時、兄さんが竹次郎を揺り起こす件で「ああ、夢だった。よかった」と思わず安堵のため息をついてしまったほど。
ああ、新年早々、とてもいい落語を二席も聴けて、今年は落語的にはいい年になりそうだなぁと思ったのであった。
ちなみに。今日は、隣の席の方に恵まれなかった・・・。年配のご夫婦と思しきお二人なのだが、ご主人の方が、奥様に「これは妾馬だよ。前に◯◯で聴いただろ」とかなんとかおっしゃったり、「鼠穴」の半ばで「これは夢なんだよ」とおっしゃったり・・・。お願いですから、おしゃべりになるんでしたら、奥様にだけささやいてあげてくださいまし、という気分であった。特に、ネタバラシみたいなことは、おっしゃらない方がよろしいかと。ついでにもう1点。1席目の半ばから落げまでの間、どこからともなく結構大きな寝息&酒臭い息が漂ってきて、これまた迷惑であった。といいつつ、わたしも今日は鼻炎の症状がちょっと出ていたのであるが・・・。<追記>
なんか、今回のネタに限らず、どんどんディテールが書き込まれていって、ネタの構成が緻密になっていくのだけれど、このまま行くとどうなっちゃうんだろう? すごく興味がある。暮の独演会で、体力がいるネタというのがあって、ということを話されたのを、ふと思い出した。談春師の落語を聴くにはこちらも体力が必要だし、勉強も必要だな、と改めて思う今日この頃。いや、別に勉強しなくても、楽しめるのだけれど、談春師が行くところについていこうと思うと、やっぱり自分も広い意味での落語の勉強をした方が、より楽しめるような気がする、という意味なんだけど。