『目黒の狂女』2007_040

今月、次の巻が出る予定で、それまでに読んでおこうと思っていたら、なんと、刊行が1ヶ月延びてしまった、「中村雅楽推理全集」。
3巻も、面白かったです。戸板先生が推理小説を書き始めて、時間が経つとともに、血なまぐさい事件は姿をひそめ、歌舞伎の世界を中心とした、さまざまな人たちの人間模様とその中で起こるちょっとした“事件”を雅楽が解決していく、という風に内容が変化しています。
殺人事件や強盗事件を解決するばかりが、推理小説ではない、ということを、読んでいて改めて感じさせてもらいました。
解説を、先ごろ直木賞を受賞された、松井今朝子さんが担当されているのは、タイムリーです。原稿執筆を依頼された時点ではまだ、発表されていなかったでしょうから、これも何かのご縁なんでしょうね。
日下三蔵さんが指摘されていますが、歌舞伎が人々の暮らしからは遠い世界のことになってしまった現在、推理小説ファンにはわかりにくいけれど、そこが味わいとなっている作品も少なくありませんが、お芝居好きな方なら、とても楽しめると思います。
松井さんといえば『仲蔵狂乱』という、ステキな歌舞伎を舞台にした作品がありますね。

仲蔵狂乱 (講談社文庫)

仲蔵狂乱 (講談社文庫)