『歌右衛門の六十年』

なるほど、二代の中村歌右衛門によって、昭和の歌舞伎を語ることができてしまうのか・・・。それだけ、歌右衛門という名前の存在というのは、昭和の歌舞伎にとって大きなものだったのか、ということを。
六代目歌右衛門というと、わたしの中では「飯炊き」。圧倒的な存在感だった。3階の最前列から、なんだか訳がわからないなりに、引き込まれていた。飯炊きの手順がどうとか、そういうことじゃなくて、主君の跡継を自分の手で守るのだ!という揺るぎのない決意みたいなものがヒシヒシと感じられて、彼の美しい動きに魅入られていたような気がする。
そんなことを、ふと思い出した。