「わたしと円紫師匠シリーズ」初の長編

北村薫『秋の花』(創元推理文庫)読了。

「わたしと円紫師匠シリーズ」初の長編。
とはいえ、円紫師匠の出番は、最後の最後までないのだけれど。
「わたし」は、高校の後輩の事故死をめぐる謎に、巻き込まれていく。
正ちゃんと江美ちゃんも登場するが、今回はなんといっても「わたし」の独壇場。

今回も、古本屋めぐりが好きな「わたし」は、様々な本を読んでいる。
その中には、知らない著者の知らない書名や、著者の名前は知っていても読んだことがない書名が、あれこれ出てくる。
そして、はるか昔に読んでいても、また読みたくなる本も。
たとえば「わたし」が卒論のテーマに選ぼうとしている芥川竜之介や、江美ちゃん・正ちゃんと文学ツアーに出かけるテーマとなった伊藤三千夫『野菊の墓』などがそうだ。

文庫版の解説を書いている北村暁子さんも、
「登場する本のなかにも、作者の想いがこめられている。(中略)読者はそれらの本をも読み味わうことで《私》の想いを共有することができる。これも《北村薫のミステリ》のプラスアルファの楽しみである」
と、指摘されている。

いよいよ、次は傑作の呼び声が高い『六の宮の姫君』だ。
これも、楽しみだ。