今年のマイ・ベスト5に入る『半落ち』

今日も快晴。それにしても、冷え込みが厳しい。
午前中は、仕事で五反田へ。JR渋谷駅は改良工事まっただ中で、ラッシュのピーク時間にはさぞかし大変なことになっているだろう。

夕方、いつもの本屋へ。今日はちくま文庫デー。『冥途 内田百間集成3』、『尾崎翠集成(下)』、『花の大江戸風俗案内』と、講談社文芸文庫『わが荷風』の4冊で、4000円を超えた。とても文庫本とは思えないお値段。それでもこうしたシブイ本が文庫に入れば、読みやすくなるので有り難い。
とはいえ、松崎天民の『銀座』などは、中公文庫版を古本屋さんで見つけて入手したにもかかわらず、先日出たちくま学芸文庫版も買ってしまったのだが。

横山秀夫さんの『半落ち』(講談社)読了。
これは、スゴイ。現役の警部=梶がアルツハイマーにかかってしまった妻を、思いあまって我が手にかけてしまい、2日後に自首する。梶は取り調べに対して、犯行動機・状況についてはすんなりと自供する。ところが、この空白の2日間に何があったのか、だれもその真相を知ることができないまま、物語は梶の「半落ち」のまま進んで行く。
この空白の2日間を解明しようと、それぞれの立場や思惑を胸に、男たちは梶と次々に対決を試みるのだが・・・。

もちろん、推理小説としての面白さは十分あるのだが、それ以上に梶という男と、彼の謎の2日間とその澄んだ瞳に魅入られた男たち一人一人の描き方が素晴らしい。その魅力に引き込まれて、あっという間に読了してしまった。
もちろん、ラストも「おお、そうだったのか!」。それでいて読後の余韻もしっかりと残る。ミステリーだからと侮れない、と改めて思い知らされた一冊。