源平布引滝

「かいな」と義太夫のほうでこの端場を呼ぶのは、小道具の印象が強いからであろうが、瀬尾のこのセリフも、なかなか味のあるいいまわしで、根っからの悪人でないとわかってしまうと、いかにも苦労人のこの老いたる武士のいいそうな言葉だと思う。

         戸板康二『すばらしいセリフ』「腹にかいながあるからには」P.79