『きもの歳時記』

山下悦子『きもの歳時記』(平凡社ライブラリー)を読んでいる。先日読んだ、林真理子『着物をめぐる物語』(新潮文庫)に出て来た、新潟の小千谷縮の製作過程が説明されている。実は、現在昔ながらの小千谷縮は、ほとんど作られていないということを知った。こういう、すべてが手作業の布というのは、どんどん作り手がいなくなっているというのは、とても残念だ。
でも、普段着としてしか着られない縮を百万円以上も出して買うことができる人は、今の日本にはそうそういないことも確かだ。しかも、実際に糸を作り反物を織る人の手には、ほんのわずかしか収入をもたらさない。それでは、この並大抵ではない忍耐を要求される手技を受け継ごうなんて思う人は、なかなかいるまい。