隅から隅まで読みたい「BOOKISH」(2)

藤原”わが落語の師”龍一郎さんの「安藤鶴夫の落語の本」は、わたしにも馴染みのある『わが落語鑑賞』をめぐる周囲の評価、未だ積ん読のままになっている『寄席紳士録』『落語国・紳士録』の面白さが凝縮されている。若い頃、わけもわからず読んだ安藤鶴夫旺文社文庫の数々を手放してしまったことを、悔やむ気もちが湧いてくる。
そして、ジュンク堂9階の棚にあった『安藤鶴夫作品集』(朝日新聞社)の4巻にわたしにとっては、幻の名作「巷談本牧亭」が収録されているのを、手にとって確認したにもかかわらず、棚に戻してきてしまった優柔不断を、この藤原さんの一文を読ませていただいて、かみ締めてしまった。
さらに、藤原さんの「特集短歌」では、わたしも大好きな『わが落語鑑賞』に久保田万太郎が寄せた俳句に、付句があって、俳句や短歌はよくわからないながらも、「なんだかいいなぁー」などと、生意気にも思ったのだった。

有馬卓也さんの「長谷川幸延・人と作品」では、これまたお名前はあちこちで見かけていながら、未だ近づく手がかりを得られなかった、長谷川幸延という作家への素敵な道案内をしていただいた。
大友浩さんは、噺家さんが自分の筆で書いた本の中からいいものを拾い上げて紹介されていて、先日深く考えることなく買った、三遊亭円之助『はなしか稼業』(平凡社ライブラリー)、藤原さんの日記で紹介されていて読んでみたいと思っていた『ためいき坂くちぶえ坂』も、ジュンク堂の棚にあったなと思い出した。

また「私が愛した落語本」という11人の本好きかつ落語好きの皆さんによる、好きな落語本についてのコラムも、読みたい本が山盛りで、ちょっとわたしには危険な香が漂っている。

これだけでも、十分元はとっておつりが来た!くらいなのだけれど、まだ読んでいないお楽しみがたくさんあるわけで、最近は雑誌を買っても、興味のある連載や特集くらいしか読まないわたしにとっては、珍しく”隅から隅まで読む!”雑誌にめぐり合ったと言えるだろう。