海老蔵襲名披露夜の部@歌舞伎座

どうしても土日の切符が取れず、平日だけど千秋楽に。部長、ありがとうございました〜! 別に特別、新・海老蔵ファンというわけでもなかったのに、口上を見ているうちにジーンとしてしまった。「源氏物語」でお父さんに抱っこされて登場した舞台のことなど思い出し、そのお父さんが闘病中であるということを思い・・・。あの坊やがこんなに立派になったのねぇ〜!という、歌舞伎を見続ける喜び?みたいなのを実感。といっても中抜けがだいぶ長いけれど。
勧進帳」では、あんなに憂いを帯びた富樫を初めて見たぞ!とこれまた感動。今まで結構、いろんな「勧進帳」を見てきて、マイベスト・オブ・富樫は仁左衛門さんかなぁ?と思っていたけれど、今日の海老蔵さんの富樫が、1位の座に。それにしても、やっぱり写真で見る十一代目團十郎さんによく似ています、海老蔵さん。この人はとりあえず今のところは、荒事や時代物がニンに合っているなぁと、再確認した。
三津五郎さんの弁慶。團十郎さんで!という期待が大きかったからだと思うけれど、なんか大きさが足らない気が・・・。口跡のこととかは措いといて、やっぱり團十郎さんの、あのスケールの大きな弁慶が見たかった!と心から思った。三津五郎さんは、踊りが上手いのが、かえって災いしてしまったように思えた。多分、最初から、三津五郎さんの弁慶だったら、こんな風には思わなかったのでは?
それにしても、弁慶が花道の引っ込みにかかる前に「三津五郎さん、おつかれさま〜!」と声をかけた方がいたけれど、気持はわかるけど、あれはかえってやり難くなってしまったのでは?と思う。弁慶という気力・体力両方が要求される、しかもほとんど独り舞台といってもいい1時間半あまりを全力で演じて来て、その後になお、飛び六法で引っ込むという過酷な芝居で、気を入れ直してと思っているところに、あのかけ声は酷ではなかったか? そして、飛び六法のお囃子のリズムに合わせて場内は手拍子モード。なんか、あれもいいのか悪いのか?
「魚屋宗五郎」は、とにかく三津五郎さんのワンマンショー。妹があらぬ嫌疑をかけられて、殿様からお手討ちになったという噂を聞いて、断っていた酒をつい飲んでしまう、その心理の変化と酔いっぷりは、お見事! お屋敷の腰元の菊之助さんも、上品で初々しくて綺麗で、大変結構でした。そして、この芝居にも。愛妾を短慮から手討ちにしてしまった若殿さまの役で、海老蔵さんが登場。スッキリさわやかだけど、癇が強そうな若様ぶり。対してしどころのある役とは思わないけれど、出て来るだけで舞台がパっと明るくなる。
口上は、並ぶ人数が多いので、去年の團菊祭に比べると一人一人の挨拶は型通りだったけれど、その中では、菊五郎さん、三津五郎さん、左團次さんあたりが、期待に応えて、楽しい口上を述べてくださった。体調不良で芝居には出ていない雀右衛門さんも、座頭格で並んで、口上の口開けで華を添えている。背筋をピンと伸ばして座っているお姿は、後光が射しているかのようだった。
團十郎さんの病状は、どうなんだろう? お元気になられたらぜひ「勧進帳」の弁慶を拝見したいものだ。