立川談春四季の会・夏@横浜にぎわい座

春につづいて、年4回の会の2回目。移動中にすごい雨が降ったらしいが、桜木町に着いた時には、もうすっかり小降りになっていたので、ラッキーだったかも。そういえば、末広亭の余一会の時も、ちょっとだけ雨に降られたのだった。当日精算になっていたので、受付で名前を言うと「遠くからわざわざありがとうございます」と係の人に言われた。
今日は、「小猿七之助」ほか2席となっていたのだけれど、ご本人は「ほか2席といったのを、ここにきてチラシをみるまで、すっかり忘れてました」とのこと。
黒紋付で登場したので、1席目は何を???と思っていたら、「鰻の幇間」だった。このネタ、去年も一度、聞いたのだけれど、またまた進化していた。鰻屋に上がって、とりあえず、子供が座敷から出てきて驚いたところで、女中さんに小言を言うのだが、それ以外は文句も言わず、ひたすらヨイショに勤める幇間。旦那がはばかりに立った間に、師匠が「芸人は、マメじゃなくちゃいけない」と言っていたのを思い出して良かった、とか、独りで妄想をふくらませている件りが、おかしい。さらに、相手が立派な旦那だと思っていたら、マンマと一杯食わされたとわかって始めて、お馴染みの小言になる。香の物がキムチ、鰻が中国産、しかもエイヒレかと見まごうばかりの焼き方、さらにお米がタイ米と来て、お酒は凍ってシャリシャリしている(一時、凍結酒っていうのが、居酒屋で出てきた事があったけど、最近はそういえば見ないな・・・)、そして最後に掛軸が相田みつを。これには、会場中が爆笑だった。50分くらい経過していたので、びっくり(そんなに時間が経っているとは思わなかった)。落げが終えると即、袖に入って、緞帳もおりてしまったが、お囃子はつないでいる。なので、当然仲入りではないわけだが、ここで席を立ってロビーやトイレに行く人が結構いた。まぁ、着替えだろうから、トイレにサっと行って来るくらいの時間はあるわけだけれど、ここでにぎわい座スタッフが、もう少し配慮してくれていれば・・・。なんと、談春さんが着替え終わって、高座に戻ってきても、上手側のドアは横も後ろも開けっ放しのままだったのだ。「小猿七之助」にサっと入ってしまった談春さん、廊下越しにトイレや売店の物音がバッチリ聞こえる。でも、スタッフが閉めてくれないので、わたしの隣のお嬢さんが、とりあえず、上手側の扉を閉めに行ってくださった。でも、後ろのドアは開けっ放し。先日の、ブディストでの携帯電話の音はネタも半ばを過ぎていたので、すでにこちらも集中していたから無視できたが、端から開いたドアの外の音は、ドアに近いところに座っている人間にとっては、やはり高座に集中できず、冒頭の部分は、落ち着けないままどんどん過ぎて行ってしまった。ああ、もったいない。
わたしにとって、初めての談春さんのお囃子入りのネタだったのに・・・。PAの調整ももう一つだった気がするし。最後に、歌舞伎の「小猿七之助」をひとくさり。これがまた、カッコイイのだ。
以前、とある落語会のお席亭に「一度、談春さんでお囃子入りのネタを聞いてみたいです」とリクエストしたことがあったのだけれど、その時はその願いは叶わなかった。で。今回1回だけで決めてしまうのは早計かもしれないけれど、談春さんの落語は、お囃子入りじゃなくていいかも・・・。談春さんの口演だけで、十二分に雰囲気が伝わってくるものねぇ。いや、でも「掛取漫才」とか「二階ぞめき」なんかを、お囃子入りで聞いてみたいという希望はあるわけで、やっぱり、また、違うネタでやってみてくださ〜い!
で、今度こそ仲入り。
最後の1席は、何をやるか決めていないと、1席目のマクラでおっしゃってまして、ここで登場しても「まだ、決めていない」と。まずは、「小猿」の導入部分を大胆にカットしてやってみたというところから、「カッコイイ噺をやる方が、面白い噺をするより楽なんですよ」と、これは談春さんじゃないと、ちょっと言えないかも(というか、談春節ですな・・・)。談志師匠が若い頃にやったのを聞いて「こんなカッコイイ噺、どうして誰もやらないんだろう?」と思ったのが、このネタを覚えるきっかけだったとか。それから、末広亭の余一会の感想などをいろいろ。で、お客様が良かった、とかつまらなかったとか、上手いとか、下手とか言うのとは別の次元で、噺家じゃないとわからないスゴさみたいなのって、あるんじゃないか?とおっしゃっていたのは、なんとなく納得がいく。たぶん、今、わたしがあの方(談春さんがお名前を挙げた方)の落語を聞いても、その凄さって感じられないかも???という気がしてますです、はい。他にも、いろいろと爆笑の話題などあって、最後の1席は「紙入れ」。なんか、久しぶりに色っぽいおかみさん(女性)が出て来るネタを聞いた気がする。やっぱり、こういう女性が出てくるネタ、上手いよなぁと思う。途中、旦那が帰ってきたのであわてて飛び出した新さんが、紙入れを忘れてきた事に気付いたところが、すっごく面白かった。ああいうリアクション、初めてだ。これ、すごくよかったです。あと、翌朝、おっかなびっくり旦那の家に行ってモジモジしている時に、旦那から言いたいことがあるんなら、言えと迫られて、それでもモジモジしているところへ「じゃあ、俺の方はお前に言いたいことがある」って言って「本の続きをなんで持って来ないんだ」と怒られるところあたりが、わたしとしては、非常に面白かった。その後、旦那から「意見をしてやれ」と言われておかみさんが「これは、あくまでもあたしの考えですけどね」と断って、紙入れはちゃんと引き出しにしまったからと言う前に、新さんに向かって目配せをするところが、すんごく色っぽくて、でもおかしくて「ああ、これですよ、これ」と思ったのだった。
かえすがえすも「小猿七之助」が、残念。たぶん、下手側のお客さまとかは、あまり気にならなかったのでしょうがねぇ・・・。とても楽しみにしていた「小猿」だけに、ああ・・・。
ちなみに、今日も福田和也さんが、客席にいらしてました。ほんとに、惚れられちゃったのね・・・。
あと、出囃子の話。これは、駆け出しの落語ファンとしては知らなかったことなので、ひとつ勉強になりました。それと、志ん生師匠と志ん朝師匠の幇間をめぐるエピソードとか、お馴染み圓楽師匠の爆笑ネタとか、後半戦の導入は落語版「ちょっといい話」で、またそういう話題を聞かせてくださいね(辛口批評?も含め)。