『東京新大橋雨中図』

途中、中断をはさみつつ、読了。

この本を読もうと思ったのは、数年前、中野翠さんの、東京都現代美術館に行ったこと(たしか、「水辺の東京」というようなタイトルの企画展だったはず・・・)を書いたコラムを読んだのがきっかけ(その展覧会のことは、坪内さんもどこかで触れていた気が・・・)。その時に出会った小林清親の評伝小説として、この本のことを取り上げていらっしゃったのだった。で、2年ほど前に「ブ」で入手していたのだけれど、なんとなく読むきっかけを逸してしまい、ずっと積ん読山脈に埋もれていたのを、一月ほどまえに発掘して、機が熟すのを待っていた。
読み始めるまでは、そんなことはすっかり忘れていたのだけれど、このところ立て続けに読んだ澤村田之助モノの小説に登場した、芳年、曉斎といった同時代の絵師たちが登場して、期せずして芋づるだなぁと思ったのだった。自然に、この芋づるになるような流れができていたんだな、きっと。
明治維新に巻き込まれた一人の御家人が、その結果、絵師となったわけだけれど、今まで知らなかった下級武士がどのように明治維新という時代の大転換点を乗り越えたのか、ということの一端を知ることができた。そして、時代の変化は、政治や経済ばかりでなく、歌舞伎役者や絵師といった人々の身の上にも、大きな影響があったということを、改めて最近の田之助モノとこの作品で知った。
解説で、田辺聖子さんが紹介されていた、桂川みね『名ごりの夢―蘭医桂川家に生れて (東洋文庫 (9))』は、以前にもどこかで紹介されていて興味をもったのだけれど、改めて読んでみたいと思っているところ。
杉本さんの明治ものとして、これから読んでみたいと思っているのが
残映 (文春文庫)

残映 (文春文庫)

間諜 洋妾おむら〈上〉 (文春文庫)

間諜 洋妾おむら〈上〉 (文春文庫)

あたり。