『家、家にあらず』

途中でだいたいの結末はこうだろう、と思ったのが当たっていたが、だからといって、この作品の面白さが減ったわけではない。松井さんが用意した展開に、すっかりドキドキワクワクさせられて、最後まで読み続けることができたのだから。
解説で、杉江松恋さんが「これは"ゴシック・ロマンス・ジャパネスクだ」と指摘されているけれど、ゴシック・ロマンスについての記述を読んで「なるほど、ゴシック・ロマンスってそういうタイプの小説のことなんだ」と納得。P・D・ジェイムズってゴシック・ロマンスの正統派なんだ〜。
はたして、瑞江は自分の道をどちらに定め、歩き出すのか? なんとなく「こっちなんだろうなぁ〜」とは思うのだけれど、そこは読者の想像にゆだねる形で、物語は終わっている。
『非道、行ずべからず』から、『家、家にあらず』とつながった系譜は、次なる作品に受け継がれるらしいことは、『今朝子の晩ごはん 嵐の直木賞篇』でチラと出てきたので、その作品が本にまとまるのを、首を長くして待つことにしよう。

家、家にあらず (集英社文庫)

家、家にあらず (集英社文庫)