『マイ・ラスト・ソング』

久世光彦さんには、一度、赤坂の街で遭遇したことがある。独特の空気感を漂わせて歩いていらしたので、その瞬間にすぐに久世さんとはわからなかったのだけれど、通りすぎて1拍おいて「あ、久世さんだ!」とわかった。
久世さんのドラマは子どもの頃に「寺内貫太郎一家」も「ムー一族」も見ていた。でも、向田邦子さんの方に気を取られて、久世さんの演出ということには、正直、あまり意識が向いていなかった。
演出家・久世光彦さんのことを意識し始めたのは、向田さんが亡くなってから、TBSで年に1本か2本「向田ドラマ」がOAされるようになってから。どこかに影のある画面作りやキャスティングに、注目したし、だいたい見ていた。
その久世さんが小説を書いていたことに気づいたのは、もっとずっと後になってから。『一九三四年冬 乱歩』を偶然見つけたからだった。いや、気づいてはいたのかもしれないけれど、あえて読もうとはしていなかった、というべきかもしれない。
向田ドラマ以上に、そこには独特の暗さや淫靡さが感じられて、おもしろかった。とはいいながら、続けて久世さんの小説を読む、という展開にはならなかったのだけれど…。
この『マイ・ラスト・ソング』も、かなり以前に買うだけ買っていたけれど、そのまま本の山の中に埋れていた。ふと、目についたので読み始めたら、結構、すーっと読めてしまった。読みながら、わたしのラスト・ソングはなんだろう?と考えながら。きっと、久世さんもたくさんのラスト・ソングを挙げていらしたけれど、わたしもその時その時で変わるんだろうなぁ〜。今だったら、ちょっとカッコつけてバッハの無伴奏チェロ組曲とか?

一九三四年冬―乱歩 (新潮文庫)

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ムー DVD-BOX 1

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TBS 水曜劇場の時間ですよ

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バッハ:無伴奏チェロ組曲(全曲)

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