『水郷から来た女』

ずいぶん以前に、御宿かわせみシリーズ10巻あまりは読んでいたのだが、先日、本棚にさしてあった1巻に目が止まって、読み返してみた。以前に読んだ時には気付かなかったが、江戸の市井の風俗が各話の隠し味になっているのに気づいて、図書館で2巻以降を借りて折にふれて読んでみようかと。
『水郷から来た女』は、シリーズの3巻目。東吾とるいの仲も4年あまりを経て、だいぶ落ち着いてきた。それでも、ふとした折にるいが気をもむシーンもあるが、それが女というもの…。かわせみのスタッフたち、東吾の兄、東吾の親友で八丁堀の同心・源三郎も相変わらず健在だ。
「秋の七福神」では季節外れの七福神めぐり、「江戸の初春」では正月の門付けをする猿回し、「桐の花散る」では成田不動の深川開帳で興行されたカンカン踊り、「夏の夜ばなし」では化け物屋敷、といった具合に、江戸の風物詩がストーリーに彩を添えるだけでなく、プラスアルファの役割を果たしている。
捕物帳的な部分もありつつ、人のこころの機微や市井風俗を楽しむ読み物として、少しずつ読んでいきたいシリーズだ。

新装版 御宿かわせみ (3) 水郷から来た女 (文春文庫)

新装版 御宿かわせみ (3) 水郷から来た女 (文春文庫)