三津五郎さまの「靭猿」と吉右衛門さんの「一條大蔵譚」
ついに、四月の歌舞伎座千龝楽。これでまたしばし、三津五郎さまの舞台とはお別れだ…。
ということで、「寿靱猿」は、ひたすら三津五郎さまを見ていた。筋書のインタビューで「復帰の演目といえども、挑戦したい」とおっしゃっていた、歌舞伎座本興行での初役。最近は、復帰といえば「お祭り」と相場は決まっているけれど、家の芸で、しかも決して軽くない、でも明るく楽しくおめでたい演目を選んだ三津五郎さま、さすがだ!
小猿ちゃんも、ふたりともとてもよかったし、又五郎さん・みっくんも良かったし、常磐津の舞踊というのも、大和屋らしいなぁ。
とりあえず、7月までは舞台出演はお休み決定とのことだが、いろいろと若手をご指導なさるご予定もあるとのこと(明治座の花形とか)。
そして、夜の部の「一條大蔵譚」。今まで、定評のある役者さんの舞台も拝見しているのだけれど、どうも面白いと思ったことなかった演目。今月も、吉右衛門さんは「一條大蔵かぁ〜」とちょっとがっかりしていたのだが、千龝楽の「一條大蔵」はすばらしかった。吉右衛門さんの大蔵卿が綺麗なお公家さんで、ニコーっと笑った時のこぼれるような愛嬌がステキだ。さらに、作り阿呆をやり過ぎないところがよかった。正気に戻った時の切れ味鋭さが、対照的で、夫の裏切りのために自害した成瀬への思いやりもしっかり感じられた。吉右衛門さん、さすがだなぁ。
加えて、鬼次郎・お京夫婦を演じた梅玉さんと芝雀さん、成瀬の歌女之丞さんと、重要な役どころに適材適所の役者さんが揃っていて、お芝居を盛り立てていたのも大きい。今ベストの「一條大蔵」だったかも。はじめて、このお芝居が「面白い!」と思えた。
時蔵さんは、昼夜で踊り一本ずつ。せっかくなら、お芝居が見たかったなぁ…。
- 作者: 坂東三津五郎,長谷部浩
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2010/09/15
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