日記を愉しく読むには・・・

久しぶりに、秋晴れのいいお天気。こんな日は、どこか自然のある場所でのんびりとしたくなる。が、現実は仕事がにわかに忙しくなってきて、そうもいかず。

鴨下信一さんの『面白すぎる日記たち 逆説的日本語読本』(文春新書)読了。
これまで、タイトルに日記とある本は何冊か読んできた。最近だと、坪内祐三さんの『三茶日記』や目黒考ニさんの『笹塚日記』(ともに本の雑誌社)や、鹿島茂さんの『成功する読書日記』(文藝春秋)など。また中野翠さんの『毎日ひとりは面白い人がいる』(講談社)も、タイトルに”日記”とうたっていないが、日記だ。
これらの人の日記は、著者自身に対する興味から、彼らの日常生活を垣間見たいなと思って手に取った本だ。そして、「日記」というスタイルをとりながらも、ある意味、書評あるいはエッセイというべきかもしれない。

一方、鴨下さんが取り上げられた日記の多くは、雑誌連載といった”原稿”という前提の下で書かれた上記のような”日記”とは違い、書かれたた時は書き手の”日記”である(もちろん、後に公開することは想定した上で書かれたものもあるが)。
鴨下さんは、著者の有名・無名を問わず、日記を読む愉しみを与えてくれるような”日記”を取り上げて、それらの日記から読み取れるさまざまな事柄は、結局、日本語の変遷や在り方であるということを伝えようとされている。

また、日記を読む愉しみの一つに、ミステリーを読むような”謎解き”の面白さがあるということに、この本を読んでいて気づかされた。
日記の作者が、どんな心理状態でその日の日記を綴ったのか、文字には書き表されていない“行間”に、どんな心理や真実が隠されているのか、ということを推理しながら読むということは、わたし自身、無意識のうちに行っていたような気がする。しかし、それを意識的に読もうとすることで、もっと日記を読む愉しさが味わえるということを、この本で教えてもらった。