本の病

田村治芳さんの『彷書月刊編集長』(晶文社)を読んだ。
田村さんといえば、”なないろ”さんとか”ななちゃん”という呼び名で、坪内さんや内堀さんなどの著作の中に登場する、古本屋さんであり、「彷書月刊」の編集長だ。
田村さんが「なないろ文庫ふしぎ堂」という古本屋さんを、九品仏の駅前でやっていらっしゃったことは、「彷書月刊」などで存じ上げていたのだが、「なないろさん」とという呼び名の由来は、この本を読んで初めて知った。
また、ゴールデンウィーク美学校の催し「松山俊太郎さんのお話を聞く会」で、そのなないろさんが、世話役的なことをされていた理由も、わかった。

そして、「II 雑誌『彷書月刊』より」「III 幻の昭和」「IV 五反田古本物語」の各章では、本が本を呼ぶ、そんな本との出会いの面白さが伝わってくる。
たとえそれが、他の人にとっては、何の価値もないと思われる本の山であっても、すぐれた古本屋さんのアンテナに引っかかれば、たちまち宝の山になるということを、改めて知った。ここに登場するのは著者の田村さんをはじめ、みんないい意味で”本の病”の重症患者だ。

そして”本の病”を解き明かすもう一冊、スティーヴン・ヤング『本の虫』(アートン)を読書中。こちらは、”本の虫”によって病にかかってしまった人々について、様々な症例を集めて分析している。
読んでいるうちに「どうもこれは・・・」と思いあたる節があるのだが、それでも「わたしは、そこまで重症じゃない!」とあえて反論してみたくなる。
著者は謎の人物とのことだが、もしかしたら・・・。