『にっちもさっちもー人生は五十一から』

小林信彦さんの「人生は五十一から」シリーズは、文庫で追いかけているのだけれど、たまたま「ブ」の単行本2冊で1000円セールの時に発見して、文庫本化前のこの巻を拾えた。後書きでご本人も書いていらっしゃる通り、”クロニクル”で、「ああ、あのことがあったのは、この頃だったのね」と、自分の中では点と点だった事柄が、線としてつながっていく。そして、小林さんが紹介される本や映画、音楽は、なんだかこちらまで気になって来る。
”本格推理”小説は、ほとんど読まなくなっているのだけれど、鮎川哲也さんの訃報の回で、鮎川さんの初期の作品と、それにまつわるエピソードが紹介されているのを読むと、なんだか読んでみたくなってしまう。
映画も、黒沢明の「姿三四郎」の最長版が収められたDVDのことを読んでいると、そのDVDが見てみたくなるし・・・。
小林さんが、たびたび政府の経済政策の貧困ぶりを嘆き糾弾され、ご自身が体験されたスーパー・インフレのことなど書いていらっしゃるのを読んで、「ああ、大変な時代なんだ、やっぱり」と思う傍らで、小林さんが紹介される本や映画に物欲が刺激される、という非常に矛盾した自分のリアクションを、なんだか持て余し気味でもあるのだけれど(笑)。