『無事、これ名馬』

宇江佐真理さんの本を久しぶりに。火消の頭と武士の息子、その家族たちとのちょっと変わった、でもあったかな交流を描いた作品。主人公の少年のお父さんの名前、どっかで見た記憶があると思ったら、解説を読んで、以前に読んだ作品の続編だったことが判明。

春風ぞ吹く―代書屋五郎太参る (新潮文庫)

春風ぞ吹く―代書屋五郎太参る (新潮文庫)

そうかぁ、あの時のあの二人、こんな風になったんだなぁ。そして、息子が生まれて。
火消の頭の家には、これまた複雑な事情があって、それが切ないなぁ。でも、そんな頭の家の事情を知ってか知らずか主人公の「たろうちゃん」がいい緩衝剤になっていたりもする。臆病だし、剣術も勉強もイマイチ、でも人柄はとってもいい、そんな「たろうちゃん」が成長していく姿は、すがすがしい。
女の嫉妬、年老いることの醜い一面、人の命のはかなさ、きれいごとばかりでない物語の中で、どれだけの人が「たろうちゃん」の優しさに触れて、救われたことか。人間はみな、弱い。だからこそ「無事、これ名馬」なのだ。
無事、これ名馬 (新潮文庫)

無事、これ名馬 (新潮文庫)