際物ではない超能力者もの

宮部みゆきさんの<A HREF=http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi/3be9eb04314cb0105a09?aid=p-mittei16105&bibid=01181466&volno=0000>『龍は眠る』</A>(新潮文庫)読了。

またまた、宮部さんの作品を読んだ。
どうも、一度読みだすと癖になってしまうようで、次から次へと入手しては、読み、読んでは入手するという繰り返しが続いている。
他にも、読みかけ、近々読みたい本など、相変らず山積みになっているのだが、宮部さんの本が手近にあると、ついつい手に取って読み始め、読み始めると面白くてどんどん読み進み、気がつくと宮部さんの本を買ってきてしまう。

宮部さんの作品は、時代ものから現代の本格もの、さらには超常現象ものなど、幅広いので、つぎつぎに読んでも飽きることがないし、その作品ごとの良さがあると同時に、宮部作品に共通する好きな点があることにも気づいた。
それが、作中に登場する人物への宮部さんの温かい視線であり、主人公とそれを取り囲む人々の優しさ、確固たる生き方であることに、何冊かの作品を読んでみて気がついた。

『龍は眠る』は、いわゆる超能力者を扱った作品なのだが、それだけには決して終わらない。謎解きの面白さあり、ロマンスあり、とエンターテインメントの要素をしっかりと盛り込んだ上に、常ならぬ能力を持って生まれてしまった故に悩み苦しみ、それを乗り越えて強く生きて行こうとする少年たちの姿が、しっかりと描かれている。
超能力者を扱った作品は、ともすると際物っぽい印象を受けるので、あまり好きではないのだが、『龍は眠る』からは、そういうことはまったく感じなかった。それは、超能力者の少年たちも、人間であるという視点がしっかりと定まっているからであろう。