読書の秋がやってきた

台風一過、今朝はカラッと晴れ上がった空と乾いた空気が気持ち良かった。
陽射しは強いけれど、湿気がなくて、先週までの暑さとは違う。

8時半すぎに帰宅。洗濯物を取り込むためベランダに出ると、空が雲ひとつない群青色だった。いつもは、繁華街のネオンや雲のせいで、もっと薄い色に感じられるのだが、たまに、こういう日がある。
食事を終えて、もう一度空を見ようとベランダに行くと、いつの間にか空には雲がたくさん浮いていて、いつもの薄い色に戻っていた。

あんなにうるさかった蝉も、ぐっと数が減ったようで、代わりに虫の声がかすかに聞こえてくる。
甲子園の高校野球も、残すところ決勝戦のみ。
これからは、一日ごとに秋めいてくるのだろうか。
いよいよ読書の秋の到来。

昨日から、椎名誠さんの『さらば国分寺書店のオババ』(新潮文庫)を読んでいる。これまた、坪内さんの『後ろ向きで前へ進む』を読んだことからのつながり。
これが、椎名さんの単行本デビューだったことは、気付かなかった。

20年以上前の作品なので、風俗とか経済の状況がかなり違うのだが、今読んでも「そうそう、これってやだよね」とか、「いるいる、そういう人」などと、現在でもあまり変わっていない、イヤなことやあまり有り難くない人についてのエピソードが出て来て、椎名さんの目のつけどころの妙とともに、世間が実はあまり変わっていないということに気付かされる。

例えば「国鉄はいま わしらの眼をまともに見ることができるか」。鉄道の駅や社内での「よけいなお世話」的アナウンスの話題は、国鉄がJRに変わろうとも、実質的には変わっていない。これから読むつもりの、中島義道さんの『うるさい日本の私』に通じるように思える。

椎名さんの小説は、『もだえ苦しむ活字中毒地獄の味噌蔵』、『銀座のカラス』くらいしか読んでいないので、なんともいえないが、人間観察者、世間を見る眼という意味では、椎名さんには、坪内さんや中野翠さんと同じ匂いを感じる。(椎名さんの方が先輩なのだが、わたしの体験した順番からいうと、そうなってしまうので、あしからず)