仁玉コンビ+左團次さんで堪能した「御所五郎蔵」(3)

続く「廓内夜更けの場」で、またまた惨劇が起きる。皐月の真意を知らない五郎蔵は、心変わりをした皐月を”可愛さあまって憎さ百倍”とばかりに、憎い恋敵・土右衛門もろとも殺す決意を固めて、身を潜める。そこへ通りかかったのが、皐月の打掛けを着て提灯をつけた、逢州と土右衛門の一行。物陰から飛び出した五郎蔵に恐れをなした門弟たちは、逃げてしまい、土右衛門は妖術を使って、身を隠してしまう。この妖術がいきなり出て来るところは、ちょっとびっくり。結局、五郎蔵は皐月と思い込んだ逢州を殺して、首を切り落として逃げる。そして、定式幕が閉まったところで、お約束の通り、本花道のスッポンから土右衛門が現れる。不敵な笑みを残し去って行く土右衛門さま、ステキ!!

そして、35年ぶりの大詰「五郎蔵内の場」。
前夜のショックから、すっかり様子が変わってしまった五郎蔵に、事情を知らない子分たちが意見するのだが、逆にものすごい剣幕で追い出してしまう。誰もいなくなったところで、夕べ思わず殺して持ち帰ってしまった皐月の首を、お寺に持って行って回向してもらおうと、取り出してみると、なんとその首は、先ほど子分たちが騒いでいた、逢州のものだった。そして、子分が置いて行った五郎蔵宛の手紙を読んでみたら「すべては借金を返すための苦肉の策で、心ならずも土右衛門の言うなりになるしかなかったが、死んでお詫びをするから、許して欲しい」という、皐月からのものだった。
自分の短気が招いてしまった、逢州殺し、さらには自分への真心から苦しい選択をせざるを得なかった皐月の真意を知って、自分も死んで償うことを決意する、五郎蔵。
と、そこへ逢州の無惨な死を知った皐月が、五郎蔵の身を案じて駆け付けて来る。しかし、五郎蔵は、なんの罪もない皐月を巻き添えにしたくないと、わざと冷たく「帰れ」と言う。しかし、もとより死ぬ覚悟ができていた皐月は、五郎蔵の家の前で、カミソリを自分の胸に突き立て、最期に一目会いたいと、表の戸を破って入って来ると、五郎蔵もすでに切腹して果てようとしていた。
やっと、お互いの真心を分かりあった二人は、思い出の胡弓と尺八を合奏して、あの世へ旅立つ。