なかの℃@中野芸能小ホール

前半はイキのいい噺家さんの楽しいネタ+伯楽さんの落語とインタビュー、そして師匠の音曲。後半は長講たっぷりという構成で、5時間近く。後半戦はネタ出しだったのだけれど、この番組は、もう一考あっても良いかも・・・。
一、菊朗「首提灯」
二、駿菊「ひょっとこ蕎麦」
三、三太楼「浮世床」夢
四、伯楽「藁人形」
五、紫文 粋曲「応挙の幽霊」
六、伯楽インタビュー
仲入り
七、れ紋 曲独楽
八、菊之丞「愛宕山」(ネタ出しは「佃祭」だったが、時節柄ネタを変更とのこと)
九、笑志「らくだ」
十、萬窓「居残り佐平次

今日のお目当ては、笑志さんの「らくだ」。先日、「今夜はかなりE」が楽しかったので、他流試合ではどうなるのか?と興味津々だった。いきなり「真打になりたい!」と本音?が飛び出し、事情を知っているお客はみんな爆笑。それから直前に上がった菊之丞さんがネタを変えたことをマクラの題材にして、立川流と他の協会の違いを面白おかしくしゃべる。「立川流では、なにしろただ一人しか真打ちを決めることができませんので」と。今日の「らくだ」は、屑屋さんが酔っぱらって丁の目の半次と立場が逆転するところまで。屑屋さんの酔っぱらいっぷりがおかしかった。
師匠の「応挙の幽霊」は、新内っぽく仕立たと演奏前に紹介していたが、「深川」とか「かっぽれ」といったお馴染みの曲が、あちこちにちりばめてあって、端唄や俗曲を知っている人には「オオ、そこでそれを使いますか」という楽しみがあるし、都々逸もはさんだりして、「長谷川平蔵」とはまた違う、音曲ネタ。それにしても、当たり前のことながら、師匠の三味線は、どうしてあんないい音色なのか? それもただ音色がいいだけじゃない。言葉で説明することができないのだけれど、やっぱりスゴいです。特に、後半は浄瑠璃系の三味線の魅力がたっぷりと。ほんの少しだけでも、あやかりたいものです。
菊朗さんの「首提灯」は、首を切られたと気がつく前後のしぐさが、菊朗さんっぽくて、おかしかった。駿菊さんの「ひょっとこ蕎麦」は、題名を知らなくて師範代に「ひょっとこ蕎麦が出て来るネタって、題名はなんていうの?」と聞いたら「ひょっとこ蕎麦でしょ」と言われて、「なんだ、そのまんまだ」と。三太楼さんの「浮世床」は、夢の件り。「やっぱり三太楼さんは好きだなぁ」と、毎度のことながら思う。伯楽さんは「藁人形」。以前にも聞いた事があるネタ(どなたがかけたのかは、失念)だったけれど、落げが違う。「糠屋の娘だけに」で終わらず、そのあとに、もう一くさりあって「下駄屋の娘だけにポックリ死んだ」というオリジナルの落げ(と、これも師範代から教えてもらった)。ウーン、落げだけは、普通の方がいいかなぁと思ったけれど、全体としては面白かった。
インタビューでは、萬窓さんと菊朗さんが聞き手。本を書いたきっかけや、内容について聞いたあと、先代の馬生師匠に入門したいきさつ、伯楽という名前について、馬生師匠に教わった事、趣味のバイクについてなど、興味深いお話、面白いエピソードがたくさん。馬生師匠が若くして亡くなられたのが、本当に残念。