俳句

小澤實氏の「万太郎の一句」

大仁ホテルに滞在、戯曲『波しぶき』を執筆 名月のたかだかふけてしまひけり 『これやこの』所収

小澤實氏の「万太郎の一句」

枝豆に塩たつぷりとふりしかな 『春燈』所収

小澤實氏の「万太郎の一句」

敢ておもふ燈火親しむべきの候 『春燈』所収

小澤實氏の「万太郎の一句」

番町のさる方にて 長き夜や雁うちつるゝ釘かくし 『吾が俳諧』所収 「番町のさる方にて」なんて言われると、つい、猿の殿様→「厩火事」を連想してしまうわたしって・・・。

小澤實氏の「万太郎の一句」

長き夜の二つの時計鳴りにけり 『季語別全俳句集』所収

小澤實氏の「万太郎の一句」

碧童も死んでしまひし子規忌かな 『これやこの』所収

小澤實氏の「万太郎の一句」

このところ、四五日上京せず、鎌倉にこもる 秋袷酔ふとしもなく酔ひにけり 『春燈抄』所収

小澤實氏の「万太郎の一句」

人にこたふ 秋扇たしかに帯にもどしけり 『これやこの』所収

小澤實氏の「万太郎の一句」

人に示す また道の芒のなかとなりしかな 『春燈』所収

小澤實氏の「万太郎の一句」

たよるとはたよらるゝとは芒かな 『春燈』所収

小澤實氏の「万太郎の一句」

水中亭内田誠君、逝く。……おもはざりき、この人に、かゝる寂しき晩年のあらむとは…… 何がうそでなにがほんとの露まろぶ 『春燈』所収

小澤實氏の「万太郎の一句」

九月五日、中村吉右衛門逝く。……戯れにこの人のいひけるは、小唄「波派」をうちたてむか、と わが唄はわがひとりごと露の秋 『春燈』所収 ということで、今日は初世吉右衛門の命日でした。

小澤實氏の「万太郎の一句」

九月のはじめ、木曽馬籠におもむく。藤村記念堂を訪はむとてなり はればれと馬市たちし花野かな 『春燈』所収

小澤實氏の「万太郎の一句」

たまたまある句会にて「秋出水」といふ席題をえ、ゆくりなく五十年以前、隅田川の一部のはんらんしたる水害のをりのいたましき記憶をおもひおこして 秋出水、牛、馬、死んでながれけり 『春燈』所収

小澤實氏の「万太郎の一句」

京橋木挽町のさる方にて 舟虫の畳をはしる野分かな 『これやこの』所収

小澤實氏の「万太郎の一句」

毎日、五時起きにて、『樹蔭』一回づつ執筆 あさがほやはやくもひゞく哨戒機 『これやこの』所収

小澤實氏の「万太郎の一句」

はつあらし佐渡より味噌のとゞきけり 『春燈』所収

小澤實氏の「万太郎の一句」

花火赤くあがりて青くひらきけり 『冬三日月』所収

小澤實氏の「万太郎の一句」

玉くしげ箱根の山の花火かな 『久保田万太郎句集』 恥ずかしながら。この句の評釈を読んで、花火が秋の季語だということを、知りました。

小澤實氏の「万太郎の一句」

持ち古りし夫婦の箸や冷奴 『三筋町より』所収

小澤實氏の「万太郎の一句」

くさゝれのくさめ三つや夏の風邪 『春燈』所収

小澤實氏の「万太郎の一句」

とかくして今日も暮れけり釣忍 『季題別全俳句集』所収

小澤實氏の「万太郎の一句」

うすもののみえすく嘘をつきにけり 『これやこの』所収

小澤實氏の「万太郎の一句」

伝馬町雑唱 朝からのいひあらそひや夏の雲

小澤實氏の「万太郎の一句」

耕一応召 親一人子一人蛍光りけり 『これやこの』所収

小澤實氏の「万太郎の一句」

人のうへやがてわがうへ蛍とぶ 『冬三日月』所収

小澤實氏の「万太郎の一句」

手摺まで闇の来てゐるひとりむし 『久保田万太郎句集』所収

小澤實氏の「万太郎の一句」

さみだれや澄みわたりたる水の底 『季語別全俳句集』所収

小澤實氏の「万太郎の一句」

わが家にあれば うとましや声高妻(こわだかづま)も梅雨寒も 『春燈』所収

小澤實氏の「万太郎の一句」

梅雨ふかし猪口にうきたる泡一つ 『冬三日月』所収