上方歌舞伎を背負う役者に

久しぶりに朝から快晴。気温はさほど高くないので、過ごしやすい。

松島まり乃さんの<a href=http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4140880341/qid%3D1051766514/250-6280686-2859416>『歌舞伎修業 片岡愛之助の青春』</a>(生活人新書)読了。片岡愛之助という若手花形俳優の成長記録を描きながら、歌舞伎の入門書としてもわかりやすくという意図が、うまく実現されている。

歌舞伎の子役というと、幹部俳優の御曹司か日本舞踊をお稽古している子どもさんなのかと思っていたので、愛之助さんが松竹芸能に所属した”子役”出身だというのにまず驚いた。ということは、最近歌舞伎座でよく目にする子役たちも、こうした劇団などに所属する子どもたちなのだろう。
歌舞伎の世界にも、少子化問題が影響しているのだろうか。

愛之助さんは、9歳の秋から十三代目仁左衛門さんの部屋子として、本格的に歌舞伎俳優としての修業を始めている。関西での歌舞伎公演自体が、東京に比べると少ないので、舞台に立つ機会がそう多かったとは言えないだろう。それでも、物心付き始めたくらいで、日本舞踊のお稽古に通い、歌舞伎の舞台に立って来たというのは、ご本人の才能だけではカバーできない、”匂い”を身に付けるためには大いに役立ったのではないだろうか。

伝統や格式を重んじる世界だけに、これからも様々なハードルが彼の行く手には待ち構えているだろう。それでも、「上方歌舞伎を背負って立つ役者さんになりたい」と、決意を語っている。この本を読んでいて、持ち前の負けず嫌いで努力家という資質を活かして、愛之助さんならきっと、立派な歌舞伎役者になるだろうという期待は、いつしか確信に変わった。