談春さん三昧の贅沢な週末(3)

仲入り後は、予告通り「らくだ」。
主人公であるはずの“らくだ”は既に死んでいて、周りの人が、故人がいかにひどい奴だったかを語るところが、この噺の特徴だとは、本で読んだりして知っていた。とにかく、力が強いので、腕力で無理を無理でなくしてしまうらくだという男、身近にこんな奴がいなくて良かったと、思う。
ところが、談春さんの「らくだ」を聞いていて「なんだ、最大の見せ場はこっちじゃないの?」と思ったのが、屑屋がらくだの兄貴分にさんざん使われた挙句に仕事があるから勘弁してと頼んでいるのに、無理やりお酒を飲まされて、徐々に変わっていくところ。最初は、怖がっているのだけれど、茶碗酒を3杯、4杯と呷るうちに、どんどん強気になっていき、本音が顔を出す。この、だんだん変わっていくところに、ゾクゾクした。終わったら「勉強しなおして参ります」とおっしゃっていたけれど、十分おもしろくうかがいました、初心者は。はい。

約1時間ほどあって、夜の部。
またまた、くしゃみ。そして「今日は、『化け物使い』はやりません。来月やります。さっきの『らくだ』があんまりひどかったんで、この1時間の間にさらった噺をやります。落語家になって初めてやる噺です」
さらに「道中のところなんか、わかんないので、さっき志らくに電話して聞いちゃいました。そしたら、志らく志ん生師匠のしか知らないよと言って教えてくれたのを覚えました」とのこと。
落語をよくご存知の方は、最初の一節で何が始まるか、すぐにわかったらしいのだけれど、わたしは一体、どんな噺が始まるのか、???だった。

極貧の者しか住んでいない長屋で、乞食坊主の西念が死んでしまった。これ以上無いという汚いなりで、病の床についていたのだが、隣人が見舞いに行ったら「あんころもちが食べたい」とねだる。
病人の言うことだからと、あんころ餅を買ってやると、一人で食べたいから帰ってくれと言う。「普通、俺が金を出したんだから、お一つご一緒にぐらい言うでしょう、まったく」と思いつつ、病人だからしょうがないか、と自分の家に帰るけれど、気になるので節穴から覗く。