『吉原手引草』

積ん読の山に埋もれてしまっていたのを、でがけに発掘。松井さんは、作品事にいろんな趣向を考えて、同じようなスタイルでは書かないんだなぁ・・・。直木賞を受賞したこの作品は、吉原で全盛を誇った五代目葛城という花魁が起こした「事件」について、関係者に事情を聴きに回るというスタイルなのだけれど、その「事件」がどんな事件で、聴きに回っているのが誰か、というのは謎のまま進んで行く。
ただ、吉原がどんな場所なのか、そこで暮らす人びと、そこに通う人びとがどんなことを思い、どんな事情を抱えているのか、そんなことがそれぞれの立場で語られていて、面白いのと同時に、聞き回っているあなたは誰? 「事件」ってどんな?? という興味がどんどん煽られていく、その展開は、お見事。もっと早く読めばよかった・・・。

吉原手引草

吉原手引草