談志・志の輔夢の二人会@新橋演舞場

  • 談志「金玉医者」
  • 志の輔「徂徠豆腐」

仲入り

まさに、夢の二人会。
ふつーに考えると、まず志の輔師匠があがって、談志師匠という順番なわけで、当然、志の輔師匠もお願いに行く前に、あれこれプランを考えたのだどうな。しかし、いきなり「木賊刈」が! しかも、揚幕の開く音。歌舞伎をご覧にならない方は、あまりわからなかったようだけれど、はい、びっくりしましたよ。「えー、談志師匠が先? しかも花道から出てくる?!」あわてて花道の方を見ると、六法の真似とかしてるし・・・(笑)。客席を見渡して、手を振ったりしてるし・・・。こういう遊び心というか、サービス精神というか、その辺は、さすが。まぁ、例によって「もうダメだな」話もありつつ、ジョークでお客を小手調べ?しつつ、スーっとネタに。
「これって、何? 千両みかんじゃないし、千早ふるじゃないし、何???」と思っていたら、中盤にかかってやっと「もしかして、これが『金玉医者』?」と。意表をついた登場もさることながら、ネタでも意表をついていらっしゃるとは! 「演舞場だからって、ことさら畏まることはねぇだろう! オレは天下の談志だ!」とおっしゃっているのかと、深読み(笑)。一席目は、かなりいい感じで終えて、帰る方向を確認して、袖に。
続いて「梅は咲いたか」で、当然志の輔師匠も花道から。ちょっと緊張されてるかな?という感じもありつつ、ふつーに歩いていらっしゃるので、思わず「摺り足!」と声をかけたくなったけど、花道と反対側の席だったし、そこまでの度胸もないので、黙っといた(笑)。
高座に上がると「談志の下に弟子入りして24年、ですか・・・。一度として師匠が考えていることを読めたことは、ありません。新橋演舞場で、金玉の噺ですよ(苦笑)。順番もね、いろいろ考えたんですよ。でも、挨拶に行ったら「俺が先に行くから」の一言でわたしのプランを話す機会もなく・・・」と。「だからといって、師匠が何を考えているかを読まなくていい、ってことじゃないんですよ。外れるんだけど、やっぱり考えなくちゃいけないんです」という一言に、そうなんだよねぇ・・・と、レベルの違うところではあるものの、思いましたよ。
入門3ヶ月目くらいの思い出話をなさって、ネタに。「徂徠豆腐」は前にも伺ったことがあるのだけれど、荻生徂徠という人がどういう人物か、という説明が入っていたのは、前回は気づかなかった(んだと思う)ので、そのわかりやすさに、さすが志の輔師匠だなと。豆腐屋さんと徂徠先生のお互いを気遣う優しさ、おかみさんと鳶の頭のおかしさ。単なる「いい人噺」じゃなく聴かせられるところが、志の輔師匠のスゴいところだな・・・。
で、仲入り。この時点で8時20分! あと2席となると、9時半を過ぎるのは必至だなという声が、あちこちで。
仲入り後は、下手の襖が開いて、そこから登場。予想通り、志の輔師匠。最近おなじみの、社会保険庁と車部品メーカーのマクラから、「みどりの窓口」。このネタは、ずいぶん前に、1回聞いたのだけれど、やっぱり面白いなぁ。この人間観察とそのデフォルメの妙が、志の輔らくごの魅力だ。「そうそう、あるある。そうそういるいる」と「そこまではやらないでしょ」のバランスが絶妙なのですよ。
前座さんが高座返しに出てきて、ちょっとすると、襖のところで談志師匠がその様子を立ってじっと見ているのに、会場が気づいてクスクス笑いが。こういうところが、可愛いんだよなと、不遜なことを・・・。
二席目は、お辞儀を済ますと「これから『子別れ』っていう落語をやろうと思うんだが・・・」と。で、まず上と中のあらすじを、志ん生師匠や円生師匠のよかったところを再現したりしながら、解説。そして「子は鎹」に。去年の「談志ひとり会」でネタおろしした噺。亀ちゃんのキャラが、ますます生意気系になっていたかな? 細かいところで「あー、そう来ますか!」という展開もあって、3月に談春師とリレーでやった志らく師匠の「子は鎹」を思い出した。あまりご本人としては、出来に満足できなかったようで、「落語チャンチャカチャンでもやるか?」と。でも、談志フリークな皆様の拍手が意外に少なかったのか、「落語を知らない人にはわかんないから、ロシアンルーレットにするか・・・」と。最後に、志の輔師匠が登場したところで「本人を前にして言うのもあれですが、今、一番落語が上手いのは、志の輔です!」と。
緞帳が下り始めてお辞儀をする間が、ぴったり合っていて、なんだかこの親子の絆みたいなのを感じたなぁ。っていうのは、穿ちすぎ?(笑)。でも、特別合わせようとしてないのに(としか見えなかった)、自然に、二人の間も形も同じなんだもんなぁ・・・。