「こ奴」にこめられた、”父”の愛(1)

今月は、歌舞伎座の初日が11日と、通常に較べると遅いし、左團次さんはお休みだし、ということで、わたしの中では”ちょっと歌舞伎はお休み”状態。
そこに、スーっと隙間を埋めるように登場してくれたのが、落語なのだった。
2月に鈴本の柳朝師匠の追善興行で、小朝さんの「芝浜」を聞いて、落語の面白さに目覚めた後、吉川潮さんのポプラビーチでの連載と、藤原さんのおすすめが相俟って、4月に初めて足を運んだ立川談春さんにハマってしまった。

さらに、その助走に当るのが、志ん朝師匠の死であり、橘蓮二さんの『おあとがよろしいようで』(ちくま文庫)を偶然見つけたことであったと、思い当たる。
そして、どんなきっかけだったかはよく覚えていないのだが、吉川潮さんの『江戸前の男 春風亭柳朝一代記』(新潮文庫)を読んでいたということが、結局のところ、わたしが落語にハマる準備体操のようなものだった。

『おあとがよろしいようで』で大好きになった橘さんが、やはり撮り下ろしで、『高座の七人』(講談社文庫)を出版されていることを知り、何軒かの書店をまわって探した結果、入手することができた。ところが、手に入れたことで安心してしまい、いつしか積ん読の山脈に埋もれていった。
たまたまGoogleで「立川談春 & 吉川潮」というキーワード検索をしていて、吉川さんが談春さんの「真打ちトライアル」という二つ目時代の会に寄せられた文章などを発見して読みふけっているうちに、『高座の七人』で文を担当されているのが吉川さんで、七人の中には談春さんも入っていることに気付いて、探した。

被写体となった”七人の侍”は、登場順に、春風亭昇太さん、林家たい平さん、柳家花緑さん、立川志の輔さん、柳家喬太郎さん、談春さん、春風亭小朝さん。このうち、落語を聞いたことがあるのは、花緑さん、談春さん、小朝さんのお三方のみ。
でも、橘さんの写真と、吉川さんが一人一人について寄せられた文を読んで行くと、未知の噺家さんたちの高座もぜひ聞いてみたくなる。