『天切り松闇がたり』

浅田次郎さんの大好きな「天切り松」シリーズの最新刊「昭和侠盗伝」。三巻で寅弥が出会った母子にふたたび降り掛かる不幸に、目細一家全員で立ち向かう「昭和侠盗伝」、二・二六事件に先立つ相沢事件を描く「日輪の刺客」と、長めの2篇。そして、「日輪の刺客」の後日譚「惜別の賦」、結核療養中の黄不動の栄治が久しぶりに登場する「王妃のワルツ」、振り袖おこん姉さんの悲恋が明かされる「尾張町暮色」と、第二次大戦に向かっていよいよきな臭さを増してきた昭和を、浅田さんの視点で描いている。エンタテインメントでありながら、昭和初期の日本(大日本帝国というべき?)の置かれた状況が伝わってくる。浅田さんはやはり、優れたエンタテインメントの書き手だなぁと、思った。”天切り松”の謂れが明かされているのも、嬉しい。まさに、目細一家は、昭和の”侠盗”なのだった。「鬼平」や「雲霧仁左衛門」にも通じる、まっとうな盗人の仕事が、胸がすくような小気味良さ。
永田鉄山については、こちら*1に詳しい年譜が掲載されていました。
また、「青春と読書」のWebサイト*2には、この作品に関する、浅田次郎さんのインタビュー記事があって、やはり浅田さんは”昭和”を描くことを今度の巻の作品の眼目にされていたことが、語られていました。この辺は『蒼穹の昴』を思い出しましたね。そして、東京弁を伝えるために、このシリーズではずっと東京弁を使い続けるのだそう。まだまだ、このシリーズは続きそうで、安心、安心。

天切り松 闇がたり〈第4巻〉昭和侠盗伝

天切り松 闇がたり〈第4巻〉昭和侠盗伝

蒼穹の昴(1) (講談社文庫)

蒼穹の昴(1) (講談社文庫)