ありそうで意外と聴けない二人会その3柳家三太楼・柳家喬太郎二人会@笹塚ファクトリー

タイトル通り、ありそうで意外にない二人会。たぶん、ライブハウスみたいなところなんだろうなぁと思ったら、芝居がメインの小屋とのことで、平場にパイプ椅子を並べてあって、高座は平台で高くしてあって、なかなかいい感じだった。今、注目の若手の、ありそうでなかったお二人の会だけあって、ほぼ満席。

仲入り

  • 「国民ヤミ年金2005」
  • 船徳

オープニングトークは、二人揃って登場。なんか三太楼師匠が飛ばしてたなぁ・・・。喬太郎師匠いわく「この人、こういうところに慣れてないから、舞い上がってます」(笑)。イメージ的には、どんどんマニアックな世界に入っていくのが喬太郎師匠で、それを「まぁまぁ」と引き戻すのが三太楼師匠という役割分担だと思っていたので、意外な一面を拝見できた。
まずは、三太楼師匠が羽織なしで上がると、さっきの危ない話の続きが、客席前方からリクエスト。すかさず応える三太楼師匠に、爆笑が! さて、どんなネタをかけてくださるのかな?と思ったら、「野ざらし」。弾けてました。前座さんもいない会なので、一席終えると、ご自分で座布団とめくりを返す。こういうのも、小さな会場での落語会の楽しさだなぁ・・・。
続いて喬太楼師匠が上がると「ただいまは、大変元気のいい前座さんでした」が開口一番に。それからしばらくマクラがあって、「子別れ」の中が始まる。喬太郎師匠の「子別れ」なんて聴いたことなかったなぁ・・・と、とてもラッキーだ。なぜか、喬太楼師匠の高座は、他の人がやらないようなネタを聴く機会は多いのだけれど、こういうポピュラーなネタを聴く機会がなかったもので。亀ちゃんが、現代っ子というか、こまっしゃくれているというか、喬太郎バージョンだなぁという感じで、噺はどんどん進んで、そのまま下に突入。さて、お父っつぁんに逢ったことを口止めされて帰ってきた亀ちゃんが、いきなり「お父っつぁんに逢った。小遣いもらった。明日うなぎをご馳走してくれるって!」と言った時には「オオ、やっぱりこれは喬太郎バージョンというか、喬太郎リミックスというか、新しい『子別れ』だ!!」と思ってワクワクした。で、当然、母親に「言わないと玄翁でぶつよ」としかられる場面もなくなっているわけで、さて、落げはどうなるのかなぁ?と思ったら・・・。そもそも、この亀ちゃんだと、しんみりした場面がないままに、終わるんだろうなぁと思っていたら、鰻屋に母親がたずねてきてしばらくすると、いきなりしんみりバージョンに突入。数列前の男性は、めがねをはずして、涙を拭っていらっしゃいましたよ! かくいうわたしも、すっかりヤラれました・・・(笑)。
仲入りをはさんで、今度は喬太郎師匠から。たぶん、2席目は新作だろうなと思ったら、久しぶりの「国民ヤミ年金」。ちょうど年金未払い問題が騒がれた頃は、しばしばこのネタを、しかも、日々進化していく場に立ち会うことができて、すごく印象に残っている。今回も、ラストに時事ネタが取り入れられていて、さすがだ。
最後は、三太楼師匠。「さっき、楽屋で『子別れ』を聞いていて、ちゃんと落語をやろうと思いました」と笑いをとって、「船徳」。徳さんが、石垣に舟がくっついてしまったところで、泣き出してしまうというのには、びっくり&爆笑。徳さんが疲れていく様がリアルで、ほんとうにおかしかった。
同じネタでも、演じる人の個性で、いろんなポイントが浮き上がってきて、それがまたそれぞれに面白くなるところが、いわゆる“古典”落語の面白いところだなぁと、改めて思う今日この頃。でも、実は“新作”と呼ばれている落語にも、同じことは起こっているらしい。それをチームとしてやろうというのが、SWAなんだろうなぁ。結局、落語は落語であって、新作も古典も関係ない。面白ければ(楽しめれば、感動できれば、笑えれば、etc.)いいんだよね。